戸 張 丘 邨 (Kyuson Tobari)
東京都出身 1942年生(本名:義夫)
青山学院大学卒業
書道同文会常任理事・ 聲画会主宰
埼玉県のさいたま市を拠点にして活躍する戸張丘邨は、書壇
の在野に徹し、書風は伝統性を踏まえた表現に極めて特異な主
張を展開していく。その主張は「仮名美と漢字の融合」が長年
のテーマであり、書の開拓精神に丘邨の抱く存在論が一貫して
いる。書の信条は漢の揚雄の「言は心聲なり、書は心画なり」
を根底にして、草書の連綿にかなの美を取り入れるという独自
の発想から展開する。とりわけ連綿草を主体にし、そのリズム
に日本固有のかなの美を注目するところに、実に貴重な発想の
意義がある。かなは高野切れ第一種の典雅な美のリズムを踏まえていて、ここにも行草連綿に関わるかなの美との融合に大きな要がある。傳山の草書を追求しながら、自ら求める方向
に着々と進展する。"12年は ”古希を迎えての一区切りとして制作する” 姿勢から、幾多のテーマが提起されている。
2012年10月の書道同文会代表作家展は「志露我年毛・・・」で、山上憶良の歌は細い線が形を円く包むリズムで綿々と続き、流れの新しい表情を生む。ゆったり続くかなが漢字の連綿美を生かしている。
(「2013書作品年鑑」小野寺啓治 主筆・監修 萱原書房 )